silossowski

こんにちはシロソウスキー

くも

お久しぶりです。 世の中はすっかり春めいてきて、仕事から家に帰って、靴下を脱いで、床に足が触れたときの冷たさが心地よくなってきました。季節は足元からやってくるものなのですね。

桜もこの文章を書いている時点でほぼピーク*1となっており、燃え上がるような桜を見ていると、「うわー」という気持ちになります。

桜が歌詞に登場するJ-POPって、だいたい別れをテーマにしているけど、桜が咲くのって、新学期始まるぐらいの時期だし、別れと桜をリンクさせるのって、なんか変じゃないかな? と思っていましたが、それは自分の地元が寒冷地で桜が咲き始める時期が遅いからそう思っていただけであって、地域によってはちゃんと卒業シーズンにいい感じに咲くんですね。当たり前の話かな。 でもJ-POP聴く人がみんな温暖な場所に住んでいるわけじゃないんだから、やはり違和感があってもしょうがない。曲のタイトルに「東京」だの「柳ヶ瀬」だの、「奥飛騨」だの付けてほしいものです。 あのピチカートファイブですら、「モナムール東京」と東京にいることを主張したではないか。capsuleに至ってはさらに細かく「ウダガワフライデー」と言っている。両者とも地名など言わずとも、現在地が東京・渋谷であることがわかる存在だというのに。それに引き換えきみたちは…。

さて、そのように春といえば別れの季節とも言われますが、やはりわたくしも春のせいか、別れがずんずんと膨らんできて、いつのまにか取り込まれてしまいました。

どこからか入ってきたのか、もしくは最初から部屋のなかにいたのかはわからないのだけれど、いまの住居に引っ越して来てからずっと部屋のなかに1匹のクモがいました。

最初はシャワーを浴びていたときに現れたので、シャワーの湯を当てて流してやろうかなどと思いかけたのですが、クモは害虫を食べてくれるという話があるし、よほど人間に危害を及ぼす毒グモとかでない限り、排除する必要もないなと思い直して、湯が当たらないように気をつけてシャワーを浴びつつ、とりあえずどこかへいくのを待つことにしました。

クモはそれからもたまに姿を現します。壁ぎわとか、洗面台とか、流しのあたりとか、スプレー缶の陰だとか、たまに姿を見ました。 そうしてしばらく姿を見ていると、何だか愛着が湧いてきて、「ちゃんと虫食ってるか〜、オイ」みたいな感じというか、全自動殺虫マシーンでもあり、ペットでもあり、友達でもあり、同居人でもあるような感覚になっていました。

クモも最初に現れてから1年以上経って、なんとなくでかくなってきました。夜、部屋の電気を消して暗いなかモニターに向かって作業をしていると、モニターの明るさに誘われてきたのか、クモがモニターに張り付いています。ポインタをクモのまわりで動かしてみると、それを虫かと思ってクモが捕えにいきます。ねこをネコジャラシで遊ばせるような感覚で、クモと遊びました。

ある日、クモは足ふきマットの上に乗っていて、「クモちゃん、そんなとこにいたら危ないよ〜」と呼びかけました。クモはふだん、人の目が届きにくい、あまり踏まれないような、壁ぎわだとか物陰にいることが多いので、そんな場所にいることは珍しいことでした。

そのあとも、なぜか自分の目の届くところに姿を表すことが多くなり、たとえばベッドのまくらの上だとか、普段使っているリュックの上だとか、自分が座っているすぐ横の床だとかにいることが増えて、「どうしたの、危ないよ」という感じのことが増えて、それと同時に愛着もひとしおといったところでした。

しかし、その直後からクモが一切わたしの目の前に姿を現さなくなってしまったのです。

どうしたんだろう、ここ最近見ないな…。と思い続けていたのだけれど、その期間がだんだんと長くなり、徐々に「いなくなってしまったのか」と思い始め、しかしながら姿をしばらく見せないこともけして珍しいことではなかったので、「いや、どこかにいるのでは…」と思いつつも、よく姿を見せていた直後にトンと見なくなった状況から、「ひょっとしてクモはお別れのあいさつのため、自分の前に姿を現していたのではないか」と疑い始めました。

そうだとしたら、自分はクモのその行動を、いつまでもお別れのあいさつだと理解できずに、ただ眺めていたことになるし、クモとしても寂しいことだっただろう。そのような自責があふれてきます。

仕事から帰ると、まず部屋のなかにクモがいないか探す。 ある日床を見ると黒くて小さな点があり、「クモちゃん!」としゃがみ込みました。糸くずでした。

クモがいない部屋は、なんとなくガランとしていて広すぎる。こんなに広い部屋だっただろうか。あんなに小さなクモでもこんなに大きかったんだな、とベッドに横になったときいつも思う。クモに戻ってきてほしい。寂しい。しかしそうして、初夏の陽気はやってきます。

*1:記事を書いた時期と、発表した時期に2週間ほどズレがあります